🧩 任意後見契約とは?

── 将来に備える「もしもの時」の安心契約 ──


任意後見ってなんですか?

年を重ねると、病気や認知症などで判断力が弱くなることがあります。
そんな「もしもの時」に備えて、自分で信頼できる人をあらかじめ決めておく契約が「任意後見契約」です。


どんなときに使うの?

たとえば――

  • 通帳の管理が難しくなった
  • 施設に入る手続きができない
  • 大切な財産をだまされて失ってしまうかも

こういった時に、あなたが元気なうちに選んでおいた人(=任意後見人)が、代わりに手続きをしたり財産を守ってくれます。


誰と契約するの?

  • あなたが「お願いしたい」と思う人(家族、知人、法人など)と、
  • 公証役場で「任意後見契約」という書類を作ります(これを公正証書といいます)。

任意後見の流れ(とても大切です)

  1. あなたが元気なうちに、信頼できる人や法人と契約を結ぶ
  2. 将来、もし判断がつかなくなったときに、
  3. 家庭裁判所に届け出て、契約がスタート(=効力が発生)
  4. 任意後見人が、あなたの生活や財産をサポートします

どういうことがお願いできるの?

  • お金の出し入れ、支払い管理
  • 契約の代行(施設入居など)
  • 医療や介護に関する手続きの相談
  • 郵便物や役所手続きの代行 など

あなたが契約書に書いておいた範囲だけです。勝手なことはできません。


任意後見のいいところ

あなたの「希望」や「思い」を大切にできる
だれにお願いするか、自分で決められる
悪質な詐欺や無断契約から、財産を守れる
家族がいなくても安心して老後を迎えられる


よくある質問

Q:いつから効力が出るの?
あなたの判断が不十分になった時に、家庭裁判所が認めたときから始まります。

Q:元気なうちは?
もちろん、契約だけで効力は出ません。普通に生活してOKです。

Q:変更できますか?
元気なうちは、契約をやめたり、後見人を変えることも可能です。


最後に

 

「これからの自分の人生を、自分で決める」
それが、任意後見契約の一番の目的です。
元気なうちに備えることで、あなたらしい生活を守る準備になります。


👀 見守り契約とは?

── あなたの「今の暮らし」と「将来」をさりげなく支える仕組み ──


見守り契約ってなに?

見守り契約とは、高齢になったり、一人暮らしをしている方が、信頼できる人や団体と結ぶ「生活を見守ってもらう契約」のことです。

体が元気でも、年を重ねると、こんな不安が増えてきますよね:

  • 万が一、倒れても気づいてもらえるかな
  • 最近、人と話す機会が減ってきたな
  • 何かあったとき、誰に頼ればいいんだろう?

見守り契約は、こうした「日常のささいな不安」に寄り添う契約です。


どんなことをしてくれるの?

契約の内容に応じて、こんなことが行われます:

  • 定期的な電話連絡や訪問(週1回、月1回など)
  • 健康や生活状況の確認
  • ちょっとした相談や悩みごとの聞き取り
  • 何かあったときの緊急連絡先の確保
  • 必要に応じて、後見契約や財産管理への橋渡しも行います

見守り契約を結ぶと、どんな良いことがあるの?

「ひとりじゃない」という安心感
自分の変化に早く気づいてもらえる
不安を誰かに話せる時間ができる
必要になったとき、後見契約や医療支援にスムーズにつながる
周囲の人に迷惑をかけたくないという気持ちが少し軽くなる


誰と契約するの?

  • 支援法人や福祉法人
  • 今では、生活支援を行っている民間事業者との契約も増えています

よくある誤解

Q:「見守り契約=財産を管理されるの?」
いいえ、見守り契約だけではお金の管理はしません。あくまで「生活の様子や安全」を確認する契約です。

Q:「毎日来るの?」
いいえ、契約によって「月1回の訪問」「週1回の電話」など、ご自身で頻度を選べます


こんな方におすすめです

  • 一人暮らしの高齢者
  • 身寄りが遠く、急な変化に対応できない方
  • 将来のために「まずは少し支援を受けてみたい」方
  • 任意後見契約などを結ぶ前に様子を見たい方

最後に

 見守り契約は、まだ「元気な今」を大切にしたいあなたにぴったりの備えです。
誰かが「ちょっと気にかけてくれている」
、それだけで、暮らしはグッと安心になります。



💰 財産管理等委任契約とは?

── お金や手続きの「心配」を、信頼できる人にまかせる契約 ──


財産管理等委任契約ってなに?

年齢を重ねたり、病気になったりすると、銀行や役所の手続き、お金の管理がだんだん大変になってくることがあります。

そうしたときに、元気なうちに「この人・法人にお金や手続きをまかせたい」と契約しておくのが、財産管理等委任契約です。


たとえば、こんなことができます

  • 毎月の光熱費や家賃の支払いの代行
  • 銀行での預金の引き出し、振込の手続き
  • 年金や介護保険など、役所の手続きの代行
  • 書類の提出や保管、更新手続き
  • 大切な書類・印鑑の保管・管理

つまり、「ちょっとした手間だけど、自分ではやりづらいこと」を信頼できる人・法人に任せる契約です。


任意後見とのちがいは?

  • 財産管理契約は「今からすぐ使える」契約
  • 任意後見契約は、「将来、判断力が低下したときに発動」する契約

両方をセットで結ぶ方も多いです。
今は財産管理契約、将来に備えて任意後見契約という形もおすすめです。


こんな方におすすめ

  • 一人暮らしで、通帳や印鑑の管理に不安がある方
  • 手続きや支払いがめんどう、難しいと感じる方
  • 遠方の家族に代わって誰かに頼みたい方
  • 将来の見守りや後見契約の準備として、段階的に始めたい方

契約はどうやって結ぶの?

  1. あなたが信頼する人または法人を「代理人」として選びます
  2. 公証役場で「財産管理等委任契約」の公正証書を作成
  3. 契約内容に沿って、代理人があなたの手続きを支援します

よくある質問

Q:全部のお金を任せるの?
いいえ、契約で任せる範囲を細かく決められます。「光熱費だけ」「通帳の管理のみ」など自由に設定できます。

Q:だまされたりしないか心配
信頼できる専門家や法人と契約し、公正証書で内容を残しておけば、トラブル防止になります。

Q:契約を途中でやめることは?
あなたが元気であれば、いつでもやめたり、内容を変えることができます。


最後に

お金のこと、手続きのこと。
「今は大丈夫」と思っていても、急に困ることもあります。

財産管理等委任契約は、「まだできる今」のうちに、将来の不安を小さくしておくための賢い準備です。

あなたの暮らしを、あなたらしく続けていくために。
この契約が、小さな安心のきっかけになれば幸いです。


✉️ 遺言ってなんですか?

 

──「あなたの気持ち」をしっかり未来へつなぐための手紙 ──

 


遺言(いごん・ゆいごん)とは?

遺言とは、自分が亡くなったあとに、家族や大切な人たちに伝えたい「想い」や「希望」を、正式な形で残す文書のことです。

よくある例としては

  • 自分の財産(お金・不動産など)を誰にどれくらい渡したいか
  • 面倒を見てくれた人に感謝の気持ちとして財産を残したい
  • お葬式の方法や納骨の希望
  • 子ども同士がもめないように分け方を決めておきたい

など、自分の「最後の意思表示」として、とても大切な意味があります。


なぜ遺言が大事なの?

家族や親族が相続で争うのを防ぐことができる
自分の思いを、確実に実行してもらえる
遠くにいる家族や、大切に思う人に感謝の気持ちを伝えられる


遺言がないとどうなるの?

遺言がない場合は、法律に従って「法定相続(ほうていそうぞく)」という形で財産が自動的に分けられます。

でも、それがあなたの思い通りになるとは限りません
家族の間で「これは私の分」「あなたには言ってなかった」など、争いになるケースも少なくありません。


遺言にはどんな種類があるの?

種   類

特    徴

自筆証書遺言

自分で書く。簡単だけど、書き方を間違えると無効になることも

公正証書遺言

公証役場で、公証人にお願いして作る。確実で安全、検認不要

おすすめは「公正証書遺言」です。専門家がサポートしてくれるので、安心です。


遺言でできること(例)

  • 不動産や預金の分け方の指定
  • 特定の人に「ありがとう」を形にして贈る
  • 相続人に含まれない人(例:内縁の配偶者や世話になった人)に財産を渡す
  • 認知・後見人の指定(必要な場合)

遺言はこんな方におすすめ!

  • 子どもがいない、または複数いて相続トラブルが心配な方
  • 特定の人に財産を渡したい明確な意志がある方
  • 身寄りが少なく、遺された人に迷惑をかけたくない
  • おひとり様で、死後の手続きまで自分で準備したい

よくある質問

Q:まだ元気だけど、遺言って早い?
いいえ、元気な今だからこそ、しっかり考えて準備できます。必要があれば、あとから書き直しもできます。

Q:子どもに内容を伝えた方がいい?
信頼できる家族には内容や保管場所を伝えておくとトラブル防止になります


最後に

 

遺言は、「亡くなったあとのための書類」ではなく、「今を安心して生きるための備え」です。
誰かのために、そしてあなたらしい人生の締めくくりとして
、とても大切な一歩になります。


🏠 家族信託とは?

──「大切な財産を、信頼できる家族に預けて守ってもらう仕組み」──


家族信託(かぞくしんたく)ってなに?

家族信託とは、自分の財産を、信頼できる家族に託して、将来のために管理・運用・処分してもらう制度のことです。

あなた(財産の持ち主)が、「この人にまかせたい」と思った家族(受託者)に、財産の管理や使い方をお願いしておくことで、将来、認知症になってもスムーズに生活や相続の準備ができるようになります。


なぜ今、家族信託が注目されているの?

これまでの制度では

  • 認知症になると、口座が凍結されてお金が使えない
  • 不動産が売れない
  • 後見人を立てるのに時間も手間もかかる

そんな問題がありました。

でも、家族信託をしておけば――

元気なうちに信頼できる家族に預けておける
万が一認知症になっても、スムーズに財産が使える
相続対策や、子どもや孫への財産の引き継ぎも柔軟にできる


どんなときに使えるの?

たとえば

  • 「認知症になっても、自宅を売ったり貸したりして生活費に充てたい」
  • 「アパートの管理を息子に任せたい」
  • 「障がいのある子どもに、自分の亡き後もきちんと生活資金を渡したい」
  • 2代目、3代目までの財産の流れを自分で決めておきたい」

こういった家族の状況や希望に合わせて、柔軟に設計できるのが家族信託の特徴です。


登場人物は3

役割

説明

委託者

財産を持っていて、信託する人        

ご本人(父・母など)

受託者

財産を預かり、管理・処分する人

子ども、配偶者など信頼できる家族

受益者

財産から利益を受け取る人

通常は委託者本人(例:お父さん)


よくある誤解と正しい理解

Q:「財産を渡したら、全部相手のものになるの?」
いいえ、財産は預けるだけ。管理権限を渡すだけで、使い道や利益は変わりません。

Q:「普通の贈与や相続と何が違うの?」
家族信託は「契約によって、生きている間から将来のことまで、自由にコントロールできる仕組み」です。


家族信託と他の制度との違い(比較)

項目

家族信託

任意後見

財産管理委任

認知症後の対応

◎ 可能

◎ 発動後に有効

柔軟性・自由度

◎ 高い

△ 限定的

△ 限定的

財産の引継ぎ設計

2代先まで設定可能

×

×

管理対象

不動産・預貯金・有価証券など広範囲

制限あり

主に預金など


家族信託の手続きの流れ

  1. あなた(委託者)が、誰に何を任せるか考える
  2. 専門家と相談しながら、信託契約を作成(公正証書がおすすめ)
  3. 財産を「信託名義」に変更して、実際の管理がスタート
  4. 必要に応じて登記や銀行手続きも実施

最後に

家族信託は、あなたの「想い」と「財産」を、これからの暮らしに合った形で守る新しい選択肢です。

「元気なうちに準備しておくこと」
それが、将来の安心につながります。
 

⚰️ 死後事務委任契約とは?

──「亡くなった後」の手続きを信頼できる人に託しておく契約 ──


死後事務委任契約ってなに?

人が亡くなったあとには、たくさんの手続きが発生します。

たとえば…

  • 役所への死亡届の提出

  • 葬儀や火葬の手配

  • 賃貸住宅の解約

  • 公共料金や電話の停止

  • 銀行口座やクレジットの解約

  • 遺品の整理、遺骨の埋葬 など

これらは、家族がいればやってくれることですが、家族がいない・頼れない場合には代わりにやってくれる人が必要です。

そのために結ぶ契約が「死後事務委任契約」です。


どんな人が契約しているの?

  • 身寄りがいない方

  • 子どもがいない、または遠方にいる方

  • 家族に負担をかけたくないと考える方

  • 生涯一人暮らしを予定している方

  • 葬儀や納骨について、自分の希望をきちんと実行してほしい方


どんなことをお願いできるの?

 

契約書で決めておけば、こんなことが依頼できます

  • 死亡届の提出や火葬の手続き

  • 葬儀・納骨の手配

  • 遺品整理や住居の片づけ、家の解約

  • 銀行口座の解約、カードの停止

  • ペットの引き取り手配

  • お世話になった人への通知、香典返し

→ 自分の代わりに、きちんと“後始末”をしてもらえる契約です。


■ なぜ大事なの?

 

自分の希望通りのお別れをしてもらえる
家族に迷惑をかけずにすむ
✅ 誰もいない場合でも、無縁仏にならずにすむ
賃貸住宅や財産の「名義・手続き」が滞らない
✅ あらかじめ準備しておくことで、安心して最期まで暮らせる


■ どうやって契約するの?

  1. 自分が亡くなったときに頼みたい人(個人または法人)を決める

  2. どんなことをお願いするかを話し合う

  3. 公正証書で契約を作成(公証役場で作成)

  4. 万が一のときは、契約相手があなたの代わりに手続きを実施します


■ よくある質問

 

Q:「お金の支払いはどうなるの?」
→ 事前に費用を預けておくことが多いです(死後事務費用の預託)。または、財産清算後に支払ってもらう契約にします。

 

Q:「身内がいても契約できますか?」
→ はい。家族に頼りきりにしたくない方、トラブルを避けたい方が契約するケースも多いです。

 

Q:「遺言とはどう違うの?」
→ 遺言は“財産の分け方”を指定するもの。死後事務契約は“手続きの代行”を頼むものです。


■ 最後に

 

死んだあとのことなんて…

と考える人もいるかもしれません。

でも、亡くなった後の手続きは思っている以上にたくさんあり、大きな負担にもなります。

 

「自分のことは自分で決めておきたい」
「安心して最後まで暮らしたい」

 

そんなあなたにこそ、死後事務委任契約はとても有効です。



🕊 尊厳死宣言とは?

── 「最期の医療」は、自分で選びたいという意思表示 ──


尊厳死って何?

 

尊厳死(そんげんし)とは、回復の見込みがなく、ただ生命を延ばすだけの延命治療を、自分の意思で「受けない」と決めることをいいます。

つまり、「延命を望まない」=「もう苦しい治療はしないで、自然に最期を迎えたい」という意思です。


尊厳死宣言(リビング・ウィル)とは?

 

尊厳死宣言は、自分が元気なうちに「治療の希望」や「終末期の医療方針」を書面で残すことです。
「リビング・ウィル(Living Will)」とも呼ばれます。


どんな内容を宣言できるの?

  • 人工呼吸器や点滴、心臓マッサージなど、延命措置を望まない
  • 意識がない、回復の見込みがないと診断された場合は、自然に任せてほしい
  • 苦痛をやわらげる緩和ケアだけは受けたい

これらの意思を、公正証書などの正式な書面で記録しておきます。


なんのために必要なの?

 

家族が迷わず、本人の意思を尊重できる
医師・医療機関が、法的に安心して対応できる
無用な延命による苦しみや費用負担を避けられる
自分の人生を、最期まで自分で決めるという準備になる


こんな方におすすめです

  • 「最期は自然に、穏やかに過ごしたい」と考える方
  • 病気や認知症になる前に、意思を明確にしておきたい方
  • 家族に迷惑や後悔を残したくない方
  • ひとり暮らしで、医療判断をしてくれる家族がいない方

宣言の方法

  • メモや自筆の遺書でも意思は示せますが、より確実なのは「公正証書」で残す方法」です。
  • 公証役場で「尊厳死宣言公正証書」を作成し、必要なときに家族・医師へ提示できるようにします。

よくある質問

 

Q:本当に治療を受けられなくなるの?
いいえ。あくまで「本人の意思として延命を希望しない」と伝えるもので、状況に応じて医師や家族が協議します。

 

Q:あとから気持ちが変わったら?
はい、宣言はいつでも撤回・変更可能です。


最後に

 

「尊厳死」は、「死」を急ぐことではありません。
むしろ、自分らしく、納得して「生きる」ことを選ぶ行為です。

あなたの意思を、あなたの言葉で残す。
それが、家族やまわりの人への何よりの「思いやり」になるのです。